個人再生の清算価値とは

 このページでは、個人再生の清算価値について解説いたします。

 個人再生が認可されると負債は原則5分の1に減額されます。(もとの負債の額によって5分の1や10分の1など減額 率は異なります。ここでは一番多く適用される5分の1で説明します)。

 たとえば7社で1000万の負債は、認可により5分の1の200万まで減額されます。
 これは800万円も負債が減っており、大幅な減額です。

 しかし、たくさん財産がある人にここまで負債の減額を認めてあげる必要はありません。
たくさん財産があれば、その財産で負債が返済できるからです。

 債権者も債務者が持っている財産からお金を返してもらえるという期待があります。
 そのため、負債の減額は財産の総額までしか認めないという制限があります。

 これが個人再生の清算価値保証の原則です。

 破産した場合は、債務者の財産が債権者に分配されます。個人再生でも債務者の財産に相当する額だけは債権者に確保させようという趣旨です。
 この債権者への分配の対象となる財産を清算価値と言います。

 1000万の負債で財産が300万円とします。
この場合、1,000万の負債は5分の1の200万まで減額されません。200万円を超えた額の財産があるからです。
結局1000万の負債は財産総額の300万円まで減額されるという事になります。

個人再生の清算価値と各財産の評価額

次に個人再生の清算価値を計算するにあたって、財産はいくらと計算すべきか。その評価額が問題となります。

個々の財産ごとに見ていきます。

〇現金の清算価値 

現金はいたってシンプルです。
50万円の現金をもっていれば、それは50万円の価値です。そのため、特段評価にあたって問題となることはありません。

もっとも、この現金をすべて清算価値に加えなければならないかというのは別問題です。
すべての財産を清算の対象にしては、生活ができなくなります。個人再生の申立てをする人の生活費が必要です。
そのため、ある程度の生活費として今後かかる分は清算価値から引くことができます。

その額は具体的には99万円です。
例えば、300万の財産があり、そのうち現金が150万とします。

この場合、総財産300万-現金150万のうち99万=201万

が清算価値ということになります。

〇預貯金の清算価値

 銀行に預けている貯金も、それが50万円ならば、50万円が清算価値です。そのため、評価の計算は単純です。

99万円の控除の問題

 現金の場合は前述のように清算価値から99万円を上限に控除することができました。

 しかし、預貯金の場合は現金ではないため、控除することは原則できません。

 しかし、現金なら控除されて、銀行預金なら控除されないというのはおかしいですよね。現金か、銀行の口座に預けているかなんて、その時の偶然の事情にすぎないですから。

 そのため、大阪地方裁判所の個人再生では、普通預金も現金と同じものとして清算価値の計算をします。
 その結果下記のように計算します。

※総財産 300万円 総財産のうち現金が50万円、普通預金が100万円の場合

総財産300万-現金50万-普通預金100万のうち49万=201万

が清算価値となります。

 ただし上記のように普通預金を控除できるのは大阪地方裁判所の特別ルールとなります。

 他の裁判所では認めてくれないところもたくさんあります。
 そのため申立時に、普通預金の99万控除ができるか事前に調べておいた方がよいです。

 もし普通預金の99万控除ができない裁判所だった場合どうするか。

その場合、口座からお金を下ろして現金で持っておくという方法が考えられます。個人再生の申請前に現金化しておいた方がよいでしょう。

〇自動車の清算価値

 自動車の評価額は原則は売値です。

 仮に売却したらいくらで売れそうな自動車かということです。実際に売る必要はありません。

 この売値に関しては実務上ッドブックという本が利用されています。例えばカローラならいくらか、ということが車種ごと、年式事にわかります。

 車検証から年式などを調べて、その評価額を清算価値に加えることになります。

 なお、新車時よりだいぶたっている場合は、売却してもほとんど値がつきません。大阪地方裁判所の場合、新車時より7年たっていれば評価をゼロとして扱ってくれます。

 ただしこれは、通常の日本の乗用車の場合です。外車などの高級車については7年以上経っている車でも価値がある事が多いです。そのため、中古車屋で、査定をしてもらった価格を個人再生の申立書に添付して、精算価値に計上する必要があります。

〇保険解約返戻金の清算価値

 民間の生命保険など、仮に解約すれば解約返戻金が発生する場合があります。

 つまり掛け捨てではない積立てタイプの保険です。お子様の教育費のために積立ておく学資保険なんかが典型例です。

 この場合は解約返戻金について保険会社に証明書を発行してもらいます。電話で請求すれば発行してくれます。そして、保険会社から送られてきた証明書の額を清算価値に計上します。

 なお、仮に解約した場合の解約返戻金の額を清算価値に計上します。
 そのため、実際に保険を解約までする必要はありません。

〇退職金の清算価値(個人再生の申立て時期により変化)

 退職金が発生する会社にお勤めの場合、その退職金は清算価値に計上します。

 しかし、全額ではありません。実際にでる退職金の8分の1だけ計上すればOKです。

 個人再生をするからといって会社を退職するわけではないからです。
 債権者も全額の退職金を今持っている財産と期待すべきでもないからです。

 なお、これもケースバイケースです。
 定年間近の場合は、その退職金が近い将来現金となる日が近いです。そのため、8分の1ではなく、4分の1を計上するよう指示されることもあります。

 また、就職して間もない間は退職金がないのが通常です。このような場合はそもそも退職金証明書も提出する必要がありません。

 大阪の場合、就職してから5年以内の場合、退職金証明書の提出は不要の運用です。

〇株の清算価値

 保有している株も個人再生では、時価を清算価値に計上します。

 たとえば1株の時価が100円で100株の場合、1万円を清算価値に計上します。

〇不動産の清算価値

 不動産も自動車と同じく、いくらで売れるか、その売値が清算価値となります。

 不動産屋さんに依頼すれば、査定書を作成してくれます。当該査定書を裁判所に提出します。

〇住宅ローン付き不動産の清算価値

 個人再生では、住宅ローンの支払を続けてマイホームを残す事ができます。

 この場合の不動産の個人再生の清算価値はマイホームの売値から住宅ローンの残債を引いた額です。

 住宅ローン債権者は不動産に担保を設定しているため当該不動産に優先権があります。そのため、他の債権者は住宅ローンの残債分は、不動産の価値を主張できないからです。

 例えば、マイホームの売値が3000万、住宅ローンの残債が2500万とします。

この場合、差額の500万円が不動産の清算価値となります。

個人再生の申立書財産目録に記載(清算価値)の計算

 上記の他にも考えられる財産はいろいろあります。

 個人再生の申請時に、各財産を適切に評価して財産目録に計上します。財産目録とは、財産の一覧表の事です。

 そして財産を計算して、個人再生申立て時の清算価値がいくらになるか、事前に計算する必要があります。

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