個人再生できないケースはどういう場合か。
個人再生は自己破産と異なり、認可後も原則3年間返済していく事になります。そのため、返済できる家計状況かというのが裁判所での一番の審査対象となります。
その他の要件もあわせて、以下ご説明します。
負債の総額が5,000万円以下であること
まず負債の総額が5,000万円以下である必要があります。個人再生はそれほど大きくない規模を想定しているからです。
この負債の総額には、住宅ローンは含まれません。
たとえば消費者金融やクレジットのローンの総額が2,000万円。住宅ローンの残債が4,000万円の場合、負債の総額は6,000万円となります。
しかし上記のように住宅ローンの残債務額は除外するため、負債の総額は2,000万円となります。
そのため、「5,000万円以下の負債」という条件を満たします。
その結果、上記の例では個人再生の利用が可能という事になります。
負債の総額が5,000万円を超えてしまう場合は個人再生が利用できないケースとなります。そのため、民事再生等別の法的手段を検討する事になります。
継続した収入があること
自己破産と異なり、個人再生は借金がゼロにはなりません。今後も原則3年間は返済が続きます。
そのため、現在無職の方は収入がないので個人再生ができないケースになります。
もっとも借金の整理を司法書士に相談する際に無職であったとしてもかまいません。
就職が決まる見込みがありましたら、依頼時はいったん裁判所への申請を保留します。
その後、就職が決まり、2か月ほど給料明細をもらって返済が可能な状況になれば、裁判所へ個人再生の申請をすることになります。
その間は業者の返済をストップしていただいても大丈夫です。
今後も返済できること。(個人再生できないケースとしてもっとも裁判所で問題になる点です)。
個人再生できないケースとして裁判所でよく問題になるのが、履行可能性です。
「収入がある」ということと、「今後も返済できる」ということは別問題です。
例えば、手取りの給料が20万円あるとします。しかし生活費で毎月20万円かかれば、業者への返済にまわす余力がありません。
この場合は「個人再生を申請しても履行可能性がない(返済できない)」。
という事で、個人再生できないケースと判断されます。
このように、収入と支出がほぼ同じで家計に返済のゆとりがない場合はどうすればいいのでしょうか。
他の方法としては借金が全額免除される自己破産を行うという選択肢があります。
しかしどうしてもマイホーム等の財産を残したいため、自己破産をさけたいという方もいらっしゃいます。
その場合は給料は簡単には上がらないため、支出を見直して毎月返済できる余力を作る必要があります。
例えば、あまり使っていない車を思い切って処分する。そうすれば税金や車検代など車を持っているだけかかる維持費が削減できます。また不要な任意保険を解約するといったことも考えられるでしょう。
個人再生できないケースとして問題になるその他の論点。小規模個人再生と給与所得者等再生の利用条件の問題。
小規模個人再生と給与所得者等再生
個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生という2つの種類があります。
両者の違いは「個人再生の最低弁済額」で解説しております。
給与所得者等再生の場合、所得の多い方は借金があまり減額されないケースがあります。
そのため一般論としては、小規模個人再生を利用した方がよいです。
その方が認可後の借金の総額を減らすことができます。
小規模個人再生特有の条件から個人再生できないケース
もっとも給与所得者等再生にはない、小規模個人再生特有の条件があります。
個々の債権者は個人再生に反対する権利あります。そして全体の債権額の過半数の反対があれば、小規模個人再生は認可されません。
例えば、負債の総額が400万円で、そのうちA社の占める債権が201万円だったとします。
上記の場合、A社だけで全体の債権の51%(過半数)を超えます。
そしてA社が個人再生による減額された返済計画案に反対すると、小規模個人再生が認可されません。
大口の債権者が反対する場合は、小規模個人再生が利用できないケースとなります。
給与所得者等再生特有の条件から個人再生できないケース
ただし、大口の債権者が反対しているケースでも、給与所得者等再生は利用できます。
給与所得者等再生の手続きの場合、債権者に個人再生を反対する権利はないからです。
しかし同時に、給与所得者等再生特有の要件というものもあります。
それが「給料などの定期的な収入を得る見込みがある。かつその額の変動の幅が小さいと見込まれること」という要件です。
給与所得者等再生は、基本的にはサラリーマン等の給与所得者を想定しています
自営業のみで生計をたてている方は給与所得者等再生を利用できません。
そのため、自営業の方で、かつ債権者の債権額の過半数の反対が見込まれる、という方はそもそもどちらの個人再生もできないケースとなります。
住宅資金特別条項の利用条件
住宅ローンを今後も払っていき、マイホームを残せるのが個人再生のメリットです。
オプションとしての住宅資金特別条項を申し込むことができるからです。この利用条件については下記のページに詳しく記載しておりますのでご参照ください。
個人再生と住宅ローン
この住宅資金特別条項の利用にはいろいろと条件があります。そのため、この条件を満たさなければマイホームが残せず、事実上個人再生できないケースという事になってしまいます。
住宅資金特別条項を利用できるかは、不動産を購入したときの契約書、登記簿謄本等を確認させてもらえれば、司法書士が回答させていただきます。