個人再生をしても車は残すことができるのか、という点についてご説明します。この問題についてはローンが残っている場合と残ってない場合にわけて考える必要があります。
個人再生を始めるときに車のローンが残っていない場合
個人再生は自己破産と異なり、自己の財産を残すことができるのが原則です。
そのため、個人再生の手続きで車は処分する必要がありません。
ただし、車の資産価値が高い場合、今後の弁済額には影響します。
借金の額にもよりますが、原則個人再生の認可により借金は5分の1となります。しかしそれを上回る財産があれば、その評価額の総額を下回る事ができません。
例えば、借金は500万円、車の資産価値は200万円でそれ以外の財産はないとします。
この場合、借金の5分の1は100万円ですが、車の資産価値の額の方が高いため、500万円の借金は100万円ではなく、車の評価額である200万円までしか減額されません。
なお、車の評価額ですが、基本的には新車としてできて7年以上経っている車については資産価値は0円として評価されます(ただし外車等、新車の購入価格がかなり高い場合は7年経過していても資産価値0円の評価は難しくなります)。
車のローンが残っている場合
車のローンが残っている場合は、さらに所有権留保がついているかで場合をわけて考える必要があります。
車検証の所有者がローン会社の名義になっている場合
ローン会社はローンを組むときに、所有権を留保して車検証の名義を業者のままにしておくことがあります。
返済が滞れば所有権に基づいて車を引き揚げる事ができるからです。
その後、業者は車をオークションで売却し、その代金から債権の回収をします。
これを回避するために個人再生の手続きから車のローンだけを除外し、当該ローンだけ支払を継続するということはできません。
なぜならば、一部の債権者のみ支払いをすることは債権者平等の原則に反するからです。
個人再生は集団的な手続のため、一債権者だけを優遇するという事はできないのです。
そのため、所有権留保により、車検証の所有者名義が業者になっている場合は、個人再生の手続きで車は業者に返却する必要があります。
車検証の所有者がローン会社ではなく、自己の名義になっている場合
車をローンで購入した場合で、ローンは完済していない。しかし車検証の名義は業者になっていないケースもあります。
この場合、ローン会社は車を担保にとっている事を他の債権者に主張できません。
その結果車を残す事ができます。
この場合も車は自己の財産として扱われるわけですから車の価値が高い場合は弁済額に影響する場合があります。
軽自動車の場合
軽自動車は登録制度がないので、別に考える必要があります。
現金で購入した場合やローンの支払いが終わっている軽自動車は、普通自動車と同様個人再生の手続きをしても手放す必要はありません。
ローンが残っている場合は普通自動車のように車検証の所有者名義では判断できません。
この場合軽自動車については、購入時の契約内容により判断する事になります。
占有改定といって車の所有権を他の債権者に主張できる契約をしている場合があります。
この場合は車を担保に取られているのと同様です。
そのため、個人再生の手続きで車を業者に返還する必要があります。
契約書の内容は細かくてわかりづらいので、判断ができない場合は、ご相談ください。みらい司法書士法人では車の契約書のチェック、返還すべきか等の回答を無料で行っております。
個人再生手続き後の車の返還時期、返還方法
上記のように車を返還する必要がある場合、いつ返還する必要があるのでしょうか。
まず当事務所に個人再生のご依頼いただくと車のローン債権者に受任通知を発送します。
以降、車のローンの返済もストップしていただきます。
その後、債権者から当事務所宛に「車を引き揚げたい」という連絡が入ります。
連絡が入るまでの日数は、債権者によって異なります。一般的には1週間もすれば連絡がきます。
そのため、個人再生をはじめたらすぐに車は返す必要があるとおいてください。
引渡方法ですが、通常業者が車をご自宅まで取りに来てくれます。自宅待機が仕事等で難しい場合は家族の方がかわりに引渡しすることも通常応じてくれます。
個人再生でどうしても車を残したい場合
個人再生をする際に、
- お住まいの地域に十分な公共交通機関がない、あるいは本数が少ない
- 早朝、夜間に通勤する必要があり、始発・終電では通勤できない
- ご自身やご家族の通院などに必要
等々、個人再生でどうしても車を残したい、と希望される方もいらっしゃいます。
ただ、車を保有するということは、かなり維持費がかかる事もたしかです。
毎年の自動車税、保険料、車検代、ガソリン代、駐車場代等です。
そのため、どうしても個人再生後も車が必要かをまずはよく考えてください。たまにしか乗らない場合はレンタカーを使うという手段もあります。
どうしても必要な場合は下記の代替手段が考えられます。
- 車を返却して、新しく現金で安い車を購入する。
- 現金がない場合、車を返却して、親族等から車購入費を援助してもらい、購入する。
- 現在の車のローンを親族等の第三者にかわりに引き受けてもらう。(ただしこの方法は債権者の同意が必要となります。)