個人再生は任意整理と異なり、認可により元金自体も一部カットされるのが特徴です。それでは、いったいどこまで借金が減額されるのか。
このページでは、その減額率の計算方法について解説します。
個人再生の最低弁済額の3つの基準
借金の減額率は次の3つの基準のいずれかで決まります。ある事例においてA、B、Cのうちどの基準で定まるかは後ほど解説いたします。まずはそれぞれの基準の計算式を見ていきたいと思います。
- A 負債の総額基準
- B 財産基準
- C 可処分所得基準
では、それぞれの基準を詳しく見ていきましょう。
A 負債の総額基準
まず1つめの個人再生の最低弁済額を定める基準がA「負債の総額」です。
借金がいくらあるか、によってどこまで借金が減額されるかが決まる一番シンプルな基準です。
ほとんどはこの基準により最低弁済額が定まります。
借金の額とその減額率は下記の表のとおりとなります。
負債の総額 | 最低弁済額 |
α 100万円未満 | 全額 |
β 100万円以上~500万円未満 | 100万円 |
γ 500万円以上~1500万円未満 | 債務額の5分の1 |
δ 1500万円以上~3000万円未満 | 300万円 |
ε 3000万円以上~5000万円以下 | 債務額の10分の1 |
負債が500万円以上1,500万円であれば5分の1まで減額されることになります。(γ)
例えば700万円の負債の場合、認可により負債は140万円となります。
負債の5分の1が100万円を下回る場合は、一律100万円まで減額されます。(β)
例えば、負債の額が400万円の場合は、5分の1ですと80万円です。
しかし100万円を下回ることになるため、100万円が最低弁済額となります。
実際は、個人の方で負債が1,500万円以上ある方はまれです。
そのため、ほとんどのケースがβ、γで個人再生の最低弁済額が計算されます。
B:財産基準
次に2つめの個人再生の最低弁済額を決める基準はB「総財産」です。
財産が多い場合、A(負債の総額)の基準により借金を5分の1まで減額する必要はありません。
例えば、借金が500万円で財産が200万円あるとします。
本来A基準によると表のβにより借金は5分の1の100万円まで減額されるはずです。
しかし財産が200万円あります。
その場合、5分の1(Aの負債総額基準)の100万円ではなく財産の総額(Bの財産基準)の200万円が最低弁済額となります。
このように、A(負債の総額基準)よりB(財産基準)の方が必ず優先されます。
債権者からすればなぜたくさん財産を持っている人の負債が大幅に減額されるのは納得できないからです。
少なくとも貸金が一部カットされるとしても、本人が持っている財産くらいは返済してほしいという期待があります。
これを清算価値保証の原則といいます。
※そして財産には以下のようなものが含まれます。
- 現金
- 預貯金
- 財形貯蓄
- 退職金見込額の8分の1
- 有価証券
- 不動産の時価総額
- 自動車、二輪車等の時価
- 保険の解約返戻金 など
各財産の価値の計算方法等、詳しい解説はこちらのコラムへ→個人再生と清算価値について
C:可処分所得基準(小規模個人再生では使われない個人再生の最低弁済額基準)
3つ目は可処分所得の基準といわれるものです。
簡単に言いますと「給料から生活費を引いた余りのお金がいくらか」という基準です。
この計算式は政令で定められているのですが複雑ですので、割愛します。
年収や家族構成、居住地域等によって額がかわります。
要は年収や生活費によるとこの2年間どれくらい生活に余裕があったかという基準です。
たくさんお金が余るくらい生活に余裕があったのならば、借金をそこまで減額させる必要はないという事です。
当事務所ではこの計算を無料で行っております。計算をご希望の際は直近2年分の課税証明書と源泉徴収票をお持ちください。(課税証明書は市役所で取得できます)。
個人再生の最低弁済額の基準まとめ
上記のように個人再生の最低弁済額を定めるにあたっては3つの基準があります。
それは、財産をたくさん持っている人(Bの財産基準)。収入が多く、生活に余裕のある人(Cの可処分所得基準)。の借金を大幅に減額することは公平とは言えないからです。
そして個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生という2種類があります。
このうち小規模個人再生では下記の計算方法によります。
A(負債の総額基準)とB(財産の総額基準)のいずれか高い方の額まで減額される。
これに対して給与所得者等再生では下記の計算方法によります。
A(負債の総額基準)、B(財産の総額基準)、C(可処分所得基準)のうち一番高い額まで減額される。
補足:小規模個人再生と給与所得者等再生
上記のように小規模個人再生の方が基準がひとつ少ないです。そのため、可処分所得が大きい方は小規模個人再生でいった方が得です。
例えば、A(負債の総額基準)の計算結果が100万、B(財産の総額基準)が200万、C(可処分所得の基準)が300万の場合をみてみます。
この場合、小規模個人再生ですとAとBで高い方の200万円が最低弁済額となります。
これに対して給与所得者等再生はCの基準も加わります。
そのため、300万円が個人再生の最低弁済額となります。
では、どういう場合に給与所得者等再生を利用した方がよいのか。
それは、債権者の反対が予想される場合です。
各債権者には個人再生の手続きで弁済の計画案に反対をする機会が与えられています。そして総債権額の過半数の反対があれば、個人再生は認可されません。
しかし、この反対をする権利があるのは、小規模個人再生のみです。給与所得者等再生で申請した場合は債権者に反対をする権利がありません。
そのため、大口の債権者が反対するような場合は、小規模個人再生を利用すべきでないでしょう。
この場合は最低弁済額が増えてしまいますが、給与所得者等再生でいく必要があります。